この夏、気候変動の深刻さを実感した人は多いのではないでしょうか

気候変動

欧州の熱波と干ばつ、日本の早すぎる猛暑。この夏、世界各地で起きていることを整理し、家庭でできる小さな一歩を考えます。

夏が来ました。パリをはじめとする欧州の猛暑が連日報じられ、日本でも6月の時点で厳しい暑さが続いています。気候変動という言葉を、統計や報告書ではなく、肌で感じている方が多いのではないでしょうか。

私は普段、企業の温室効果ガス排出量を算定したり、サステナビリティ情報の開示を支援したりしています。数字を扱う仕事です。ただ、その数字の向こう側で何が起きているのかを、ときどき立ち止まって眺めることも必要だと感じています。

この夏、世界各地で報じられていることを整理してみました。

欧州 ― 記録が更新され続ける夏

西ヨーロッパにとって、今年の6月は観測史上最も暑い6月となりました。世界全体でも2番目の暑さで、その背景には過去最高を記録した海面水温があるとされています。

7月に入っても熱は引きませんでした。シチリア島では48.4℃が観測され、バルセロナの観測所では100年を超える記録の中で最も高い40.5℃を記録しています。

高温と乾燥は山火事を招きました。フランスとスペインでは、家や滞在先からの避難を余儀なくされた人が37万人を超えました。フランス政府の説明によれば、平時としては同国史上最大規模の避難だったとされています。ギリシャでもアテネ近郊で消火活動が続きました。

イギリスでは、イングランドとウェールズにおいて約200年の観測史上最も乾いた7月となりました。ウェールズ全域とイングランドの半分以上が、正式に干ばつ状態にあると発表されています。

川が痩せていく

干ばつは、欧州の主要な河川の姿を変えました。

ドイツの観測システムによると、7月末の時点でライン川の観測地点の44%、ドナウ川では78%で極めて低い水位が記録されています。イタリア最長のポー川も、7月下旬に北部クレモナ近郊で過去最低の水位となりました。

ライン川では、ドイツのケルンや、オランダとの国境にあたるロビトで観測史上最低を記録しました。欧州で2番目に長いドナウ川では、ブダペストでの水位が約23センチまで下がり、これまでの最低だった2013年の33センチを下回っています。

水位が下がったことで、長らく沈んでいたものが姿を現しました。ブルガリアでは古代のマンモスのものとみられる骨が、クロアチアでは1937年に沈没した貨物船が、セルビアでは戦時中の軍艦の残骸が見つかっています。

電気が止まり、工場が止まる

一見すると考古学的な発見のように聞こえますが、同時に進行していたのは、はるかに現実的な問題でした。

発電が滞りました。 ハンガリーでは、国内の電力のおよそ半分を担う原子力発電所が、冷却水の不足によって出力を落とす事態となりました。ルーマニアはチェルナヴォダ原発への水量を確保するため、ドナウ川岸の岩を制御爆破しています。セルビアでも冷却水が足りず、石炭火力発電所の出力が引き下げられました。

工場が止まりました。 ルーマニアでは、ルノー傘下のダチアとフォードが、電力消費を抑えるためにそれぞれの自動車工場の生産を2週間以上停止することで合意しています。

物流が細りました。 ライン川は欧州で最も交通量の多い水路の一つです。コブレンツ近郊のカウプでは、航行可能な水深が過去最低の25センチまで低下しました。この地点の水位をもとに貨物船の積載量が決まるため、水位の低下はそのまま輸送能力の低下になります。

現地の水運当局は、輸送が完全に止まる可能性は低いとしながらも、貨物を複数の船に分けるといった措置が必要になると説明しています。そうした措置は輸送コストの上昇や供給の目詰まりにつながる可能性があるとも述べています。

気候の変化が、エネルギーと物流を通じて経済に直結する。その姿がはっきりと見えた夏でした。

「雨が減ったから」ではない

ここで、原因について補足しておきたいことがあります。

気候科学者の団体ワールド・ウェザー・アトリビューション(WWA)の研究によれば、ヨーロッパの大部分の地域で、降雨量が長期的に減少しているという明確な傾向は見られませんでした。

では、なぜ干ばつが起きているのか。研究者らが指摘したのは、人為的な気候変動による気温の上昇です。気温が上がれば水分の蒸発量が増え、同じだけ雨が降っていても土地は乾きやすくなります。加えて、高温と乾燥は家庭・農業・工業のいずれにおいても水の需要を押し上げます。

雨が減ったのではなく、暑くなったから乾いている。この違いは重要です。気温の上昇が続く限り、干ばつは繰り返されることになります。

日本 ― 「梅雨明けを待つ」では間に合わない

日本でも状況は同じ方向を向いています。

昨年2025年6月の月平均気温は、統計を開始した1898年以降で最も高くなりました。平年からの差は+2.34℃で、それまでの記録を大きく上回っています。全国153の観測地点のうち122地点が、6月として歴代1位の高温でした。日本近海の海面水温も高い状態が続いています。

今年についても、気象庁は6月から8月の気温が全国的に平年より高くなる見通しを示していました。40℃以上を指す「酷暑日」という言葉が、今年から正式に使われるようになったことも、暑さの水準が変わりつつあることを示しています。

かつて夏の暑さは、梅雨が明けてから始まるものでした。いまは5月や6月の段階で警戒が必要な地域が広がっています。

それで、私たちに何ができるのか

ここまで読んで、気が重くなった方もいるかもしれません。発電所や工場の話を聞けば、個人にできることなど微々たるものだと感じるのも自然なことだと思います。

ただ、無理をせずに続けられることであれば、やらない理由もありません。負担の少ないものを3つ挙げてみます。

エアコンのフィルターを掃除する

2週間に1度の掃除で(私は3ヶ月に1回しかできていないですが・・・)、消費電力を1割ほど抑えられるとされています。設定温度を我慢して上げるより、はるかに楽で、効果もはっきりしています。電気代も下がります。暑さを我慢する必要はありませんよ。

電力会社のプランを見直す

再生可能エネルギーを主体とするプランに切り替えれば、その後は何もしなくても排出量が減り続けます。手続きは一度きりで、多くの場合オンラインで完結します。習慣を変える必要がないという点で、続けやすさは群を抜いています。

食べものを捨てない

生産、輸送、廃棄のすべてに排出が伴うため、捨てられた食品はそのまま無駄な排出になります。買いすぎないこと、冷蔵庫の中身を把握すること。それだけで減らせる部分は少なくありません。家計にも直接効きますね。

いずれも我慢や犠牲を前提としないものを選びました。続かないことに意味はないと考えているからです。

おわりに

気候変動への対応は、大きな仕組みの側で進めるべきことが多くを占めます。企業の排出削減、制度の設計、技術の開発。私たちの仕事も、その一部を担うものです。

それでも、この夏の暑さを肌で感じた一人ひとりが、何かを少しだけ変えることには意味があると思っています。仕組みを動かすのは、結局のところそこに関わる人だからです。

みなさんは、この夏をどう感じられましたか。そして、無理なく続けられそうなことが、何かひとつでもあったでしょうか。

CCJ株式会社 最高執行役員
数字の向こう側で何が起きているのかを、ときどき書きます。