千葉県で観測史上最大の大雨となり、大きな被害が発生しました。なぜ気候変動が大雨につながるのか、その仕組みを整理します。
千葉県で記録的な大雨が降りました。8月13日の夕方以降、線状降水帯が相次いで発生し、千葉市中央区では24時間の降水量が350ミリ前後に達しています。8月ひと月分の平年値の、およそ3倍にあたる量が1日で降ったことになります。
16日時点で10人の方が亡くなり、床上・床下を含む浸水被害は約1500棟にのぼっています。千葉市内では約2500台の車が路上に取り残されました。
先日、欧州の熱波と干ばつについて書きました。あのときは、どこか遠い国の話として読まれた方もいたかもしれません。私自身、書きながらそう感じていた部分があったと思います。
しかし今回は違いました。関東で、これだけの被害が出ています。気候変動を肌で感じた方は、さらに増えたのではないでしょうか。
「暑くなる」と「雨が増える」がつながる理由
ここで、ひとつ整理しておきたいことがあります。
気温が上がる話と、大雨が増える話。この2つがなぜつながるのか、意外と説明されないまま「異常気象」という言葉でまとめられがちです。仕組みそのものは、実はそれほど複雑ではありません。
空気が抱えられる水分の量は、気温で決まります。
暖かい空気ほど、多くの水蒸気を含むことができます。冷たいコップの表面に水滴がつくのは、その逆の現象です。空気が冷やされて抱えきれなくなった水分が、外に出てきている。
この関係には、クラウジウス・クラペイロンの式という物理法則があります。それによれば、気温が1℃上がると、空気が抱えられる水蒸気の最大量は約7%増えるとされています。
つまり、暖まった大気は、以前より多くの水を空に持ち上げられるようになります。持ち上げられた水は、いずれどこかで落ちてきます。同じ雨雲でも、含んでいる水の量が違えば、降る量も変わる。これが「暑くなると雨が増える」の骨格です。
海が暖まっていることの意味
もうひとつ、日本に固有の事情があります。
日本近海の海面水温は、100年あたり+1.36℃の割合で上昇しています。世界平均の上昇率が+0.63℃なので、およそ2倍の速さです。2024年の日本近海の年平均海面水温は、統計を開始した1908年以降で最も高い値を記録しました。
海が暖かいと何が起きるか。蒸発が増えます。 海面から立ちのぼる水蒸気の量が増え、それが風に乗って陸へ運ばれます。
線状降水帯は、暖かく湿った空気が同じ場所に流れ込み続けることで発生します。その「湿った空気」の供給源が、日本のすぐ隣にある海です。海が暖かくなるほど、供給される水蒸気は増えます。
気温が上がって空気が水を抱えやすくなり、海が暖まって水蒸気の供給が増える。この2つが重なると、雨の降り方は変わります。
一方で、慎重であるべきこと
ここまで書いておいて言うのも妙ですが、個別の災害を気候変動のせいだと断定することはできません。
気象は、その年の気圧配置や偏西風の蛇行など、さまざまな要因が重なって決まります。今回の千葉の豪雨についても、気候変動が何割寄与したのかを、いまは断定できません。そうした分析には時間と手続きが必要です。
私たちが言えるのは、傾向としての話です。統計を見れば、日降水量の年最大値は100年間で1割ほど増える傾向が確認されています。大雨の頻度も上がっています。仕組みの上でも、そうなる理由が説明できます。
個別の出来事は断定できないが、起きやすさは確実に上がっている。 この言い方が、いまのところ最も正確だと思っています。
数字を扱う仕事をしていると、断定したくなる誘惑と、断定を避けたい慎重さの間で、いつも揺れます。ただ、確からしさを超えて言い切ってしまうと、その言葉はいずれ信用を失います。
それでも、変わらないこと
因果関係の証明が難しいことと、備えが要らないことは別です。
雨の降り方が変わりつつあることは、統計にも仕組みにも表れています。そして今回、それが実際の被害として現れました。
企業であれば、拠点や工場が浸水想定区域にあるかを確認すること。サプライヤーの立地を把握しておくこと。こうした作業は、気候関連の情報開示でも求められる項目です。私たちの仕事とも重なる部分です。
個人であれば、自分が住む場所のハザードマップを一度見ておくこと。今回の千葉の被害について、専門家がわずかな土地の高低差が影響した可能性を指摘していました。数十センチの差が、浸水するかしないかを分けることがあります。
ハザードマップを見ると、弊社の指定避難所は東京都渋谷区渋谷3丁目の「常磐松小学校」または「商工会館・消費者センター」と知ることができました。
おわりに
前回、気候変動を肌で感じている方が多いのではないか、と書きました。その数日後に、これだけのことが起きました。
被害に遭われた地域の一日も早い回復を願っています。そして、次に同じことが起きたときに失われるものが少しでも減るよう、できることから手をつけたいと思います。
みなさんのお住まいの地域は、どのような場所でしょうか。お住まいの地域のハザードマップを見てみる(地域差はありますが、行政の方々はマップにかなり気合をいれて作り込んでいますね)、それだけでも意味があると思います。
CCJ株式会社 最高執行役員 数字の向こう側で何が起きているのかを、ときどき書きます。